歯を抜かない矯正のために知っておきたい「エナメル質」のお話

論文と臨床をつなぐ歯並び講座シリーズ③
はじめに
こんにちは。院長吉野先生がABOJCにて「IPRとエナメル質」について発表を行いました。
論文と臨床をつなぐ歯並び講座シリーズ③です♩
今日は少し専門的ですが、矯正治療にとってとても大切な「エナメル質の厚み」についてご紹介します。
「歯を抜かないで矯正したい」というご希望を持つ患者さんが増えている中、このテーマはとても身近な内容となっています。
エナメル質って何?
エナメル質とは、歯の表面を覆っている白くて硬い部分のことです。
とても硬いのですが、実は厚みは限られていて、場所によって少しずつ違います。特に奥歯(臼歯)では、前よりの面と奥よりの面で厚さが違うことがわかっています。
歯を抜かずに並べる方法「IPR」
矯正治療で歯を並べるスペースをつくる方法はいくつかあります。
- 抜歯する
- 歯列を横に広げる
- 歯の側面をほんの少し削る(IPR:Interproximal Reduction)
IPRは、歯の表面のエナメル質をごくわずかに削ってスペースをつくる方法です。削るといっても、安全に行えば歯の健康に大きな影響はありません。
どれくらい削れるの?
研究では、歯の側面のエナメル質を最大50%まで安全に削れるとされています。
その結果、奥歯全体で最大約9.8mmのスペースをつくれるという報告があります。
これは、歯を抜かずに並べられる可能性を広げてくれる方法です。
実際の症例
16歳の患者さんで、上下の歯がガタガタし、かみ合わせが逆になっている部分もあるケースがありました。
このケースでは歯を抜かず、IPRを行って8mmのスペースを確保。歯並びとかみ合わせの両方がきれいに整いました。
抜歯も悪い選択肢ではありません
ここまで「抜かない矯正」についてお話ししましたが、抜歯も決して悪い方法ではありません。
- 骨格や歯の大きさのバランスによっては、抜歯をした方が横顔のラインが美しくなる場合もあります。
- 無理に歯を残して並べると、歯茎が薄くなったり、後戻りのリスクが高くなる場合もあります。
つまり、大切なのは「抜くか抜かないか」ではなく、その方にとって一番良い方法を選ぶことなのです。
気になる虫歯や歯周病のリスク
「削る」と聞くと虫歯が心配ですが、過去の研究ではIPRをしても虫歯や歯周病のリスクは上がらないと報告されています。
ただし、歯磨きや定期的なチェックはとても大切です。
日本人の場合の注意点
日本人のエナメル質は欧米人より薄いといわれています。
特に前歯は0.6mm程度しかないこともあり、削るときは量に十分な注意が必要です。
まとめ
- エナメル質をうまく利用すれば、歯を抜かずに矯正できる可能性があります。
- IPRは安全にスペースをつくれる方法で、正しく行えばリスクも少ないです。
- 一方で、抜歯も決して悪い選択肢ではなく、むしろきれいな横顔や安定した歯並びのために必要になることもあります。
「自分の場合はどっちがいいの?」と思った方は、ぜひ一度ご相談ください。
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STELLA矯正歯科では、三郷市はもちろん、吉川市・流山市・越谷市・柏市からも多くの患者さんにお越しいただいています。
「自分の場合は抜歯した方がいいの?それとも抜かない方がいいの?」と気になる方は、ぜひご相談ください。
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