論文と臨床をつなぐ歯並び講座

ハイパーダイバージェント型開咬症例に対する早期治療の考え方
(ABOJC 2025 発表まとめ)

はじめに
2025年8月19日、院長吉野先生がABOJCにて「ハイパーダイバージェント型開咬症例(HYP-OB)に対する早期治療」について発表を行いました。本稿では、その内容を整理し、関連文献もあわせてご紹介いたします。
① 前歯でかめない“開咬”はなぜ起こる?
骨格性の開咬(かいこう)の早期治療について
開咬ってどんな状態?
開咬とは、奥歯でかんでも前歯がかみ合わず、すき間があいてしまうかみ合わせのことです。
特に 「ハイパーダイバージェント型」 と呼ばれるタイプは、あごの骨の成長のバランスに問題があり、治療がむずかしいことが多いです。
なぜ起こるの?
開咬の原因はいくつかあります。
- 指しゃぶりや口呼吸などの習慣
- かむ力(あごの筋肉の力)が弱い
- 鼻やのどの病気による気道のつまり(アデノイド肥大など)
こうした要因が重なって、あごの成長に影響を与えると考えられています。
治療の選択肢
代表的な治療方法には次のようなものがあります。
- ハイプルヘッドギア
上あごの余分な成長を抑える装置ですが、効果は部分的です。 - 抜歯治療
歯を抜いてスペースを作りますが、あごの骨の改善にはつながりにくいです。 - バイトブロック(奥歯を覆う装置)
歯の高さをコントロールし、かみ合わせを整えるのに有効です。 - 垂直チンカップ
あごの骨の成長方向をコントロールでき、骨格的な改善が最も期待できます。
早く治療するメリット
開咬は自然に治ることが少ないため、小さいころからの治療が大切 です。
特に成長期にアプローチすることで、あごの骨の成長方向をよい方に導ける可能性があります。
研究からわかっていること
- 習慣の改善(口を閉じる練習など)
- バイトブロックやチンカップなどの装置の使用
- かむ力を育てるトレーニング
これらを組み合わせることで、下あごの骨の成長を助け、かみ合わせを改善できる ことが報告されています。
まとめ
- 骨格性の開咬は放っておくと自然に治りにくい
- 小児期からの早期治療が有効
- 習慣・筋力・呼吸の問題を同時に解決することが大切
参考文献
Buschang PH, Sankey W, English JD.
Early treatment of hyperdivergent open-bite malocclusions.
Seminars in Orthodontics, Vol 8, No 3 (September), 2002: pp.130-140